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【恋愛小説】駅のホームで仕組まれた運命 – 恋みくじは嘘をつかない

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春の訪れを告げる初詣。友人の美咲と訪れた神社で、私は何気なく「恋みくじ」と書かれた赤い箱に手を伸ばした。

「ねえ、これ引いてみない?」

美咲は興味なさそうな顔をしていたが、「まあ、たまには運試しも悪くないか」と私に付き合ってくれた。

私が引いたみくじは「大吉」。紙を広げると、そこには驚くほど具体的な言葉が並んでいた。

「赤い糸が近づいています。桜の季節、駅のホームで運命の出会いが訪れるでしょう」

「えっ、すごく具体的!」美咲が目を丸くする。

私も思わず笑ってしまった。こんな具体的な恋みくじは初めてだった。どこかの駅のホームで、桜の季節に出会いがあるなんて、まるでドラマのワンシーンのような予言。現実にはそんな都合のいい出会いなんてあるはずがない。

「まさかね」と肩をすくめて、おみくじを鞄の中にしまった。きっと忘れてしまうだろう。

二月、三月と冬の日々が過ぎ、桜のつぼみが膨らみ始める季節がやってきた。ある日の朝、いつものように通勤電車に乗るため駅へ向かった私は、普段より少し早く家を出たこともあり、ホームで電車を待つ時間ができた。

春の柔らかな風が吹く中、私はバッグから小説を取り出して読み始めた。赤い表紙の本は、先日友人から勧められた恋愛小説だった。物語に没頭していると、ふと顔を上げた瞬間、目に飛び込んできたのは舞い散る桜の花びら。駅近くの桜並木から風に乗って、ホームにまで花びらが舞い込んでいた。

その風景に見とれていた私は、突然軽い衝突を感じた。

「あっ、すみません!」

振り向くと、一人の男性が慌てた様子で謝っていた。優しそうな目元と、少し照れくさそうな表情が印象的だった。彼の手には、私と同じ赤い表紙の本が握られていた。

「あの、もしかしてその本…」 「え?ああ、これですか?もしかして同じものを…」

私たちは同時に声を上げ、そして笑った。彼の名は佐藤航太。偶然にも同じ本を読んでいただけでなく、感想を話し始めるとほぼ同じページまで読み進めていることがわかった。

「この作家の描写、すごく繊細で好きなんです」 「わかります!特に登場人物の心情描写がリアルで」

会話は自然と弾み、気づけば電車が来てしまった。別々の車両に乗り込みながら、「また会えたらいいですね」と彼は微笑んだ。

その日から、偶然なのか、私たちは時々同じ時間の電車で会うようになった。最初は本の感想を語り合うだけだったが、次第に他の話題も増えていった。彼は広告会社でデザイナーとして働いていること、猫を飼っていること、休日はカフェで読書をするのが好きだということ。少しずつ彼のことを知るたびに、私の心は不思議と温かくなった。

桜が満開になる週末、美咲からLINEが来た。

「ねぇ、あの恋みくじのこと覚えてる?桜の季節、駅のホームでって…」

その瞬間、私は電車を待ちながらはっとした。桜が舞う駅のホーム、赤い表紙の本…まさか、あの恋みくじの通りになっているなんて。最初は半信半疑だったが、冷静に考えてみると確かに不思議な偶然が重なりすぎていた。

次に航太に会った時、私は少し勇気を出して恋みくじの話をしてみた。

「実は年始に引いたおみくじに、桜の季節に駅のホームで出会いがあるって書いてあって…」

そこまで言うと、彼は驚いたような表情を浮かべ、少し照れくさそうに笑った。

「信じられないかもしれませんが…」

そう言って、彼は財布から丁寧に折られた紙を取り出した。それは私が持っているものと同じデザインの恋みくじだった。

「僕も同じ神社で引いたんです。『赤い糸が見えています。桜の季節、本が縁で特別な人と出会うでしょう』って」

私たちは驚きのあまり、言葉を失った。

「運命って、あるのかもしれませんね」

彼がそう言って微笑んだ時、私の心は大きく震えた。どこか不思議な力に導かれているような感覚。これが恋みくじの力なのか、それとも単なる偶然の重なりなのか。どちらにしても、この出会いには特別な意味があるような気がした。

それから一ヶ月、私たちは自然と付き合うようになった。彼と過ごす時間はいつも穏やかで心地よく、まるで長い間知っていた人のような安心感があった。

ある日、彼が私を彼のお気に入りのカフェに連れて行ってくれた。古い洋館を改装したそのカフェには、アンティークな雰囲気が漂っていた。席に案内され、彼が「ここで待っていて」と席を立った後、古びた本棚から一冊の本を持ってきた。

「これ、実は最初に会った日に読んでいた本の続編なんだ。さっき見つけたんだけど…開いてみて」

私が本を開くと、しおりとして挟まれていたのは、小さな紙片。それは私たちが引いた恋みくじとよく似たデザインだった。

「これも恋みくじ?」

「うん。カフェの主人が『縁のある人にだけ見えるおみくじ』って言ってたんだ。僕たちのために置いてくれたみたい」

その紙には「二人の絆が深まる年になるでしょう」と書かれていた。

「みくじに頼らなくても、僕が幸せにします」

航太のその言葉に、私は心が温かくなった。恋みくじが導いてくれた運命。それは、私の人生の素敵な奇跡となった。

今でも桜の季節が近づくと、あの日のことを思い出す。駅のホームに舞い込む桜の花びらは、まるで私たちの出会いを祝福しているかのように、美しく輝いている。

私と航太は毎年、あの神社に初詣に行くことにしている。恋みくじを引くかどうかは、その年の気分次第。でも私たちの恋みくじは、今も鞄の中の特別な場所にしまってある。時々取り出しては、あの不思議な出会いを思い出す。

「運命の赤い糸は、時に目に見えることもあるのかもしれない」

そう感じる今日この頃。私は航太の隣で、季節が巡り、また新しい春が訪れるのを静かに待っている。

次はどんな奇跡が私たちを待っているのだろう?それを考えるとき、私の心は温かな期待で満たされる。

駅のホームで仕組まれた運命

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